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【京都のよそゆき】 |
「よそゆき」という言葉が好きですね。多分京都発祥の言葉だと思いますが、ハレとケの使い分けを一言で言い表している。「一張羅(いっちょうら)」というのは、ただのモノのことに過ぎませんが、「よそゆき」というのは、その時間・空間・人生・思い・行動、すべてを一点集中させて、「よそゆき」として装おう、場の転換。生き方というには大げさですが、そんな暮らしぶりが根付いた生活がええですね。
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【京都のほんまもん】 |
京都のほんまもん(本物)ゆうても、何も高級な料亭や掛け軸だけやありません。桐の箪笥の引き出しがぴしっと締まる具合、長年使い込まれた銅の茶筒の鈍い輝き、細ぅ細ぅ繊細に仕上がったお箸の先っぽ。ふだんつこおてる些細なモノの中に、ほんまもんが在るということ。そんなんが、暮らしを何十倍にも引き立ててくれる、ほんまもんの暮らしなんじゃないでしょうかねえ。
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【木質文化】 |
木もまたほんまもんの素材ですね。「山杣人(そまびと)」というのは、山や木のことを熟知して生活に生かしてきた人々のことです。森林破壊というのは大量に伐採することで起こりましたが、木を刈り取ることを生業としてきた彼らは、山や木を生かす術を知っています。山で木を生産して、里山で木を使うことが、山を元気にするんです。木を使わないことが自然を守る方法ではないんです。
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【環境と煩悩の関係】 |
環境のために明日から車をやめてくれといっても無理な話。私が繰り返し思うのは、親鸞聖人の『正信念仏偈』にある「不断煩悩得涅槃」という言葉。親鸞聖人は「ふだんの煩悩を断ち切らなくていい。それで安らいだ心持ちを得ることが大切なのだ」と、煩悩を認めてその是を説いた。現状の中で、環境のことをもうちょっと考えていくとゆうのんが、実生活で大切なんちゃいますかね。
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第二の新事業展開では、「京都」「木」「ネットワーク」をテーマに考えています。
辰巳建設は、長年京都駅のすぐ近くに立地しています。だから京都市内や周辺のネットワークが強い。文化財関係の事業で培ってきた大工さんのネットワークも含め、奥深い京都が抱えているさまざまな技術が使えます。京都ならではのこうしたメリットも。今後の我々の個性にしていきます。
京都は古くから職人の街。観光だけでは、風靡で典雅な世界しか見えませんが、それを支えているのが京都の職人文化です。
いわゆる京都特有の排他的な雰囲気というのは、職人独特の世界が持つ匂いなのかもしれません。しかしそれをいい面で捉えると、匠の技を生み出す職人たちの誇りでもあるのです。これが千二百年続いた都としての特質なんですね。
実際、京都には「ほんまもん(本物)」がたくさんあります。横柄な言い方ですが、京都発祥のものも多い。日本のルーツがすべてここにある。それをしっかりと伝えることが、京都に生まれた者の使命ではないかと思います。伝えて、京都をもっともっと愛される街にしたいというのが、私の主たる思いです。
職人さんはどんどんいなくなっています。伝統の技術や匠(たくみ)の技は絶えつつある。残すべきものは残していかなければならない。技術を残すということは、その技術をどんどん使っていくことが一番です。
我々の新展開では、文化財関係の事業を通して培った大工さんとのネットワークや伝統技術の知識を積極的に活用し、家具や生活形態などのかたちで生かしていきます。いい部分をうまく組み込んで、「本物(ほんもん)」を伝えていきたいと考えています。
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